足のかゆみについて
かゆみは、皮膚の乾燥、刺激、血行障害などによって起こります。特に長期間続く足のかゆみや湿疹、ただれがある場合、血行障害によって起こっているケースが少なくありません。血行障害による皮膚症状は、かゆみ、湿疹、色素沈着、潰瘍などの他、ケガが治りにくいなどを起こすこともあります。
こうした血行障害による皮膚症状は皮膚の治療だけでは治りにくく再発しやすいため、原因をしっかり診断することが重要です。
かゆみとは
かゆみが起こるメカニズムはまだはっきりとはわかっていませんが、かゆみを引き起こしているのは皮膚や粘膜に存在するマスト細胞(肥満細胞)から放出されるヒスタミンです。蚊に刺されてかゆくなるのも、蚊の唾液成分がヒスタミンの放出を促すからです。ヒスタミンが知覚神経を刺激して脳がかゆみを感じると神経ペプチドが放出され、それがマスト細胞を刺激してさらにヒスタミンを放出させてかゆみが長く続いてしまいます。
また、皮膚の乾燥によってバリア機能が失われると、ちょっとした刺激を過敏に感じてかゆみを起こしやすくなります。その他にも、静脈の血流が滞るうっ滞を起こすと皮膚が乾燥した時のように過敏になって、かゆみを感じやすくなるケースがあります。
血液のうっ滞
足は心臓から遠く、重力の影響を受けるため、血液が心臓へと戻りにくく、うっ滞を起こしやすい場所です。夕方、靴がきつくなる、帰宅して靴下を脱ぐとくっきり跡が残っているなどは、うっ滞によるむくみで起きています。長時間の立ち仕事、座りっぱなしのデスクワークや長距離運転などでは足の血液がうっ滞して、足がむくみやすくなります。
足は重力に逆らって血液を心臓に戻すために、ふくらはぎの筋肉がポンプのように働いて血管を圧迫し、静脈弁で逆流を防いでいます。様々な原因でふくらはぎのポンプ機能や弁の機能低下や機能不燃が起こると血液が滞ってうっ滞を起こし、かゆみなどの症状を起こします。
うっ滞性皮膚炎とは
血液が滞ると静脈内の圧力が上昇します。これによって血管から赤血球が漏れてしまって、皮膚に赤血球の鉄分による赤茶や紫の斑点が現れます。こうした斑点は黒っぽい色素沈着として残ります。また、うっ滞することで皮膚への酸素や栄養素の供給が不足して、抵抗力が低下し、炎症を繰り返しやすくなります。皮膚症状だけを治しても血流を改善しない限り再発を繰り返してしまうため、進行すると潰瘍ができて皮膚が黒ずんでしまいます。
うっ滞性皮膚炎の検査と治療
血管の状態や血流をリアルタイム画像で観察できるドプラ血流計や超音波検査などを行います。痛みや不快感がなく、被ばくなどの心配もない安全な検査です。軽度の場合には、弾性ストッキングや弾性包帯による圧迫療法で血流を確保できます。生活習慣の改善、こまめなストレッチと足の運動なども有効です。ただし、下肢静脈瘤がある場合にはこうした保存療法では十分な効果を得られないため、レーザーなどによる治療が必要になります。
下肢静脈瘤の治療
うっ滞性皮膚炎が下肢動脈瘤をはじめとする血液の逆流によって起こっている場合には、日帰り手術による根治治療が必要になります。悪くなった静脈を引き抜くストリッピング手術のような以前から行われてきた治療法もありますが、当院ではレーザーによる血管を内側から焼灼する血管内焼灼術を日帰り手術で行っています。痛みや出血などを起こしにくく、きれいに治せることから、血管内焼灼術が国内でも下肢静脈瘤治療の主流になっています。手術によってかゆみをはじめ、湿疹、炎症、潰瘍などの皮膚の症状を改善させます。